2019/7/8 ”特色分解”

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2019年のゴールデンウィークは、
まさかの10連休でした。
長い休暇です。

家で仕事をしている僕にとって、
最大の”敵”と言えば、
ヒマを持て余す息子(と妻)。

少しでもスキを見せれば、
寄ってきます。

お出かけは必至でしょう。

しかし、どこのイオンもおそらく満車。

それは避けたい。。

苦悶のすえ導き出した対処策は、
”仕事をしてる風に見せる事”、でした。

おかげさまでこれは得意分野です。

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というわけで、
”Tシャツプリントの仕事をしている風”、に見せるべく、
以前から気になっていた、
”特色分解(スポットカラーセパレーション)”の勉強に着手しました。

本日はそのレポートを、

と題して、
それぞれのメリット・デメリットを
分解方法と共にお伝えしようと思います。

※ただし、わたくし、
そういう学校に行ったわけでなく、
誰かに教わった事もありません。
さらに言えば、研究はまだ途上にあり、
間違っている箇所が多々あると思いますので、
80%フィクションと思って優しい目で読み流して下さい。

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初めに、
今回お伝えする方法は、
紙ベースではないという事をご承知下さい。

Tシャツと紙では分解方法やプリント方法が異なります。

このレポートはTシャツをベースに考察したものです。

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まずシルクスクリーンでTシャツを作る流れを図説しましょう。

カラー分解は、
この図でいう、【2、データを作る】という場面で登場します。

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ではCMYK分解から説明します。

CMYKは家庭用プリンタでも使用されている、
もっともメジャーなカラー分解の1つです。

C:シアン、M:マゼンダ、Y:イエロー、K:ブラック
4色を使ってフルカラーを表現します。

例えばこの写真は、

こういう風に分解します。

そしてミックス(乗算)すると、
カラーに戻ります。

この原理を利用して、
シルクスクリーンの製版用データを作ります。

製版用データはモノクロ2階調の
ハーフトーンパターンに加工しないといけません。
(おっと、やや難しい言葉が出てきましたね。。)

つまり白黒のドットにする、という事です。

分解したシアンを、

このような白黒ドットに加工した後、
製版し、

改めて、
シアンのインクでプリントします。

CMYKそれぞれを白黒のドットに加工します。

その際に重要なのが、【ドットの角度】です。
後ほど説明する特色分解もこの【角度】がポイントになってきます。

CMYKのドット角度は
C:15度、M:75度、Y:0度、K:45度、
と決まっています。
(15度ずつ角度を変え、一番目立ちにくい黄色を0度にあてるというのがセオリーです)

これを順番にプリントします。

(※実際には白枠はありません)

すると、こういう感じになります。

分かりやすいようにドットを粗くしていますが、
細かくすればより正確に色調を再現出来ます。

ちなみに遠くで見れば、この位ドットが大きくても、
あまり気になりません。

もっと遠くへ行くと、モアレも見えなくなります。

シルクスクリーンでは枠に張るメッシュ密度の関係で、
ドットサイズに限界があります。

大体40線/インチが基準で、
60線/インチ位が限界でしょうか。
(アメリカの工場では80~130線なんてのもあります)

ドットが細かすぎると、
インクによるメッシュの目詰まりが起きたり、
製版時にドットが飛んでしまう可能性があります。
この辺は製版とインク調合の話なので、
今回は割愛させて頂きます。

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CMYKのメリット・デメリットをまとめます。

4版だけでフルカラープリントが出来るというのは、
とても経済的です。

オリジナルデータに近い色を再現できます。

CMYKはすでに調合済みのインクを使うため、
各色ごとに色指定~インク調合をする必要がありません。
データ制作やプリント工程がシンプルで簡単です。

デメリットは、

先ほどのメリットと相反しますが、
データのままの色に仕上がるため、
プリント時に微妙な色の調整が出来ません。

例えばもうちょっと青を濃くしたいんだよなぁ、
という時は、
最初からやり直さないといけないわけです。

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最大のデメリットは、
白ベースが前提のため、
黒ボディのTシャツにプリントが出来ない事です。

黒ボディにプリントすると、
こんな感じに色が沈んでしまいます。

白ベタを敷く方法もありますが、
プリントの面積が大きいと、プリント部分が厚盛りになり
ゴワゴワして着心地が悪くなってしまいます。

そもそもアウトラインを取れないデザインもあります。
(雲とか煙とかグラデーションのような)

そこで特色分解が必要になってきます。

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ようやく今回の本題、
特色分解(スポットカラーセパレーション)の説明に突入です。

紙媒体の特色”指定”とは違い、
Tシャツにおける特色”分解”は、
主に【黒ボディにフルカラープリントをする際】に使うと思って下さい。

同じくこの写真で、
分解方法を見ていきましょう。

説明の便宜上、背景が黒になっています。

これを特色分解すると、
こうなります。

ベースは白、
肌を3色に、
服は2色、
画面を引き締めるための黒、
合計7色に分解しました。

この他に、ベースに薄いグレーや、
ハイライト部分に白版を足す場合もあります。

白は”ベタ”ではなく、ドット抜きなので、
ゴワゴワ感が軽減され、着心地への影響を緩和します。

この順番で重ねます。

(※実際には白枠はありません)

ミックスすると、こうなります。
背景が黒でも色が沈んでいません。

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なぜ色が沈まないのか、
ここでポイントになるのは、
またしても【ドットの角度】です。

特色分解では、すべてのカラーのドット角度を
統一しています。

CMYKのように角度を変えると、
白から外れた部分が黒に沈んでしまうからです。

そこで、角度を合わせて、
全ての色が白の上に乗るようにします。

実際にはこんな感じです。

角度をそろえる事で、
色が沈むことなく重なります。

その角度は、
一般的には22.5度というのがセオリーらしいですが、
完全には定まっていないようです。

おそらく【~2.5度】というあいまいな角度が
大事なんではないかと思っています。

ゆえに、22.5度でも、27.5度でも
同じような結果が得られるのではないかと推測します。

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さて、特色分解のメリットは
黒ボディにプリントが出来る事だけではありません。

例えば、シャツのストライプの色だけを
青から赤に変えたい場合は、
Bule1、Bule2の版で赤インクを使えばOKです。

CMYK分解ならば元データから変更し、
製版し直す必要があります。

ここまで極端に色を変える事はほぼありませんが、
例えば肌のトーンなど微妙な色は、
プリントしてみないと色の出方が分からない事が多く、
プリント時にインクの調整で色変えが出来るというのは、
非常に利点があると思います。

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では特色分解のメリット・デメリットも
まとめておきましょう。

一番のメリットは先ほどの2点。

”データ作りが楽しい”と”分解作業が大変”は
一見矛盾していますが、
これは【逆もまた真なり】です。

デメリットはやはりコストが高くなる事です。
写真の種類によっては
10版以上必要になる事もあります。
その場合、版代やプリント代も×10になります。

そして多色版に対応できるプリント台がないと、
そもそもプリントが出来ません。

もう一つデメリットをあげるなら、
特色分解した版では、
【黒ボディにしかプリントが出来ません】。

これは影の部分をインクではなく、
ボディの”黒”で表現するからです。

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以上のような理由から、
日本ではもっぱらTシャツのフルカラープリントには、
CMYK分解を使います。

黒ボディは極力避ける傾向にあり、
どうしてもという場合は、
白ベタ+CMYKという流れが普通です。

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しかしアメリカでは、
1990年代に特色分解技術が確立し、
結果多くのバンドT(ロックT)で使用されました。

ゆえに黒ボディで美しい仕上がり+風合いの
総天然色プリントがたくさんあります。

逆にこの年代の”ロックTに白ボディが少ない”のは、
黒ボディでしか使えない特色分解法で
製版をしていたからではないかと、
僕は考えています。

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さて、ここまでのレポートは結局のところ、
机上の理論です。

でも勉強したからには、
本当に特色分解で黒ボディへのフルカラープリントが出来るのか、
実験してみたくなります。

というわけで、
久しぶりにTシャツを作る事にしました。

その辺の話は、また明日。

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あ、ついでにインクジェットプリントについても
オマケで図説しておきましょう。

※分かりやすくするために誇張表現を使用しております。
インクジェットプリントを貶める意図はありません。

むしろ僕はインクジェットプリント肯定派です。※